失った建前の代償は変態の称号だった・・・ 『変態王子と笑わない猫。』 1巻

変態王子と笑わない猫。1 (MFコミックス アライブシリーズ)

変態王子と笑わない猫。1 (MFコミックス アライブシリーズ)

心の中は煩悩まみれなのに、自分に正直になれない建前のために
欲求不満が募るばかりだった主人公・陽人。
『笑わない猫』の都市伝説に一縷の望みを託して建前を捨て去るのだが・・・

MF文庫の第6回新人賞最優秀賞と言う鳴り物入りでスタートしたラノベを原作とした本作。
早くもコミカライズ版の登場と相成りました。
原作の方は一応買ってはいるのだけれども読んでいない状態だったので、
ストーリーの内容もまっさらな状態からだったのですが、
成程これは原作を読んでいないで損をした。
確かに最優秀賞を受賞したってだけのことはありますよ。
本音だだ漏れになってしまったことによって速攻で変態王子の称号をゲットしてしまったり、
変態的な思考であるが故の直球な発言の数々をコメディタッチで描かれています。

が、自分がいらないと思ったものでも、実際に失くしてみるとその大切さに気付き、
後悔したところで時既に遅く、そのまた逆も然りで欲したものを得たところで、
本当の意味での幸せとは程遠いと、人間的な描写もかなり細かいんですよね。
漫画にせよ、アニメにせよ、ラノベ原作は当たり外れが大きいので、
かなり敬遠してしまいがちなところではあったのだけれども、これは当たりだったかも。
ストーリーもさることながら、キャラも可愛くて魅力が倍率ドン!さらに倍!ですからね。
今回収録されている内容も、まだ原作1巻の半分くらいなので、
今から読むにしても遅くはない!


陽人じゃなくても変態的にならざるを得ないヒロインの可愛さは犯罪的。
メインヒロインとなる月子の破壊力は半端ないわ。
何を言うにも無表情で、無口かと思ったらそうでもなく、
なかなかに痛いところを突いて来るツッコミも多くて、
色々とそそられるものがあったりします。
全身くすぐられて表情が変わらないなりに顔を赤らめるシーンは、
エロ可愛くてたまらんでよ。

読む前は最初から無表情キャラなのかと思っていたりしたのですが、
本来はもっと色んな表情をしてくれるキャラで、
一話目で喜怒哀楽全てが目まぐるしく変化するそれは、こっちもとにかくヤバい。

どっちも魅力的すぎるのに、何故猫像にお願いをしてしまったのか・・・
紳士なら放っておかないだろうに。
押し倒しシーンなんて据え膳食わぬは何とやらですよ。
もう一人のヒロインである梓もまたなかなかにくるものがある。
お嬢キャラと思いきや実は・・・

ある意味、本作における一番の被害者なんじゃなかろうかと。
わかりやすいツンデレタイプなので、
デレの片鱗を見せた最後のあたりからどう落ちていくのかが楽しみですね。
今回はあまり出番がなかったけれども、
陸上部部長の『鋼鉄の王』が今後どんな風に絡んでくるかも気になります。
女なのに通称がごっついし、そもそも本名さえ不詳だし、
そっちの意味でも謎が多いですよこの御仁は。
Dead or Dieってどっちに転んでも死じゃねぇか!


望み通りに願いは叶った、しかしそれが決して幸せな結果を生むとは限らない。
変態な発言や行動、展開を隠れ蓑にしているけれども、結局はそういうことなんですよね。
よくよく考えてみると、けっこう怖いものがあります。
陽人は建前を失って、本音がだだ漏れになってしまう。
月子は表情を失って、感情の起伏を表せなくなってしまう。
梓は建前を得て、見得で作られた自分自身を欺き続ける。
全員に共通しているのが、本来の自分ってものを失くしてしまっていることですか。
何気に根底は重い・・・
とは言っても、基本はコメディなので、実際は重苦しさは感じません。
むしろ、陽人の紳士っぷりが凄まじいことになっていて、
完全にギャグの領域に突入しているくらいです。
鋼鉄の王相手にスパッツ論を語ったり、

梓に斜め上いった告白をぶちかましたり、

見開きでの熱弁はキてるわー。
ぁ、でも陽人の嗜好にはかなり同意できます。
スパッツのピッチリ感はフェティシズムをくすぐられますしね。
何よりも競泳水着にも魔法がかかっているとかわかってる!
スク水よりも競泳水着派として、そこは譲れません!


本コミカライズ版に於いて、決して見逃せない点が一つあります。
それが作画クオリティ。
恐らく本作を読んだ人の大多数が思うこととは思いますが、
それでも声を大にして言わないわけにはいきません。
再現率やべぇぇぇ!!!
かつて、原作で挿絵を描いていた本人が、
コミカライズ版をそのまま手掛けたと言う実例もありますが、
そうではないパターンでここまでオリジナルに近いものを再現できるとは・・・
確かによく見比べてみると、アングルとか細部の描き込み(特にチェック柄)とか
(カントク氏は無類のチェック柄スキーとして他の追随を許さないので仕方ないところだけど)、
影の具合とかは、さすがにイラストレーターと漫画家としての差異はあるものの、
パッと見じゃわかりませんて。
表紙とか巻頭カラーの押し倒しシーンとか、
何も知らない人に二つを並べてどっちが原作かなんて
どこぞの格付けチェック的な出題をしたらかなり正答率は低くなるんじゃないでしょうか。
それほどまでにそっくりなんですもの。
※原作版

※コミカライズ版

恐らく原作を読んだ人でも、これならイメージが違うって声が出るのは
ごく少数に限られそうですよ。
こうなると、今度はこの絵が実際に動くのも見てみたくなる気がするけど、
遅かれ早かれアニメ化までされてしまうのも時間の問題のように思えてきますね。