机の上で繰り広げられる静かなる戦争 『となりの関くん』 1巻

平凡な女子高生・横井さんの隣の席の関君はまともに授業を聞いていない少し不真面目な生徒。
そんな彼が情熱を燃やすのは、無駄にハイレベルな暇潰しの数々だった・・・

学園ものと言えば何てことのない平凡なる生活や、
部活動その他課外活動のようなものに主眼が置かれることが多いもの。
そんな中で授業時間そのものに焦点を当てている時点でもかなり独特ですが、
誰もが一度は経験あるであろう授業中の暇潰しオンリーで展開される本作は、
王道にあえて反逆しているかのような挑戦的なものを感じますね。
暇潰しの域を超えた職人芸の数々を披露する関君に、
真面目に授業を受けたいのに気が付けば完全にそれどころではなくなっている横井さん。
内職がバレないか否か、ちゃんと授業が受けられるか否か。
授業中の教室と言う特有の空間において、
非常に地味ながらも熱い机上の戦争が繰り広げられていました。
全体的には横井さんの負け越しですかね。
何やかんやで気になってツッコみ入れて巻き込まれてと、
リアクションの大袈裟っぷりもあって実はけっこうノリがいいです。


授業中の内職。
それは学生生活で一度は経験あるであろう特別な時間。
人によっては居眠りであったり、早弁であったり、
中には絵を描いたり、漫画を読んだり、
教科書に載ってる偉人の顔の額に『肉』の一文字を入れたり。

当時高校の頃は割りと真面目な方だった自分でも漫画を読む等の経験はありますから、
大した思い出の無い身にとってはこういう授業時間こそが
学校生活そのものだったりすることだってあるわけです。
この授業中であるが故の独特の空気が生み出す世界観は筆舌にし難いものがありますね。
作中に出てくる台詞の大半が横井さんの心の中の声であり、
実際に言葉として出てきている台詞は1割にも満たない
半サイレント状態であることが更に独特の空気を強めてます。
小中学生だと内職なんて考えも及ばないものだったし、
大学にもなるとバレるの前提だったり、そもそも出席しなかったり。
嗚呼そうして思うと高校時代の授業時間って非常に貴重だったんだなーと。

取り戻そうとしても二度と経験することのできないあの頃。
地味だからこそリアルに当時を思い出し、
妙なノスタルジー感に浸ってしまいます。


授業風景は学生時代を思い出す普通っぷりを発揮しているものの、
当の内職そのものは現実味など知ったものかとぶっ飛んでおり。
関君のそれは完全に授業中の暇潰しってレベルを遥かに超えてます。
表紙からして消しゴムで富士山を作ってたりしますが、
基本最初から最後までずっとこんな感じです。
仕掛け付きドミノ倒しを作ったかと思えば、
コックリさんに興じてみたり猫と戯れてみたり。

他にも囲碁やチェス等の道具を用いてとんでもない斜め上のモノを作ってしまったりなども。
誰がどう見ても一発でバレるはずなのにバレないこの際どい一線。
横井さんが告発しても一瞬で片付けてしまう手の早さ。

最早これは匠の技ですね。
半サイレントな本編において、実は一言も喋ってなかったりする関君。
手先が器用で色んなものを作るサイレンター・・・
ノッポさんか!?