付き合い始めの初々しさ、真骨頂 『はつきあい』 1巻

はつきあい 1 (ガンガンコミックスＪＯＫＥＲ)

ごく普通のとある街。
一人の少年は一人の少女と出会い、恋に落ち、付き合うこととなりました。
そんな付き合い始めて間もない文字通りの『はじめてのお付き合い』をテーマに描かれる
初々しさとこそばゆさが溢れる珠玉のオムニバス作品集である本作。

最初から最後まで悶絶もののエピソードが全開で、
基本1〜2話の短編エピソードで話が進むために毎回新鮮な気分であり、
あまりに悶えすぎて一話一死は余裕です。

ラブコメって言うとどうしても出会いから様々なプロセスを経て、
告白してその後も色々あったりとかして、
最終的に付き合うことになってハッピーエンドって話が多かったりしますけど、
こういう最初から付き合っていることから始まるものって少なかったりするんですよね。
しかもそういう作品に限って浮気とか別れがテーマとかだったりして・・・
ぃゃー、本作を読むともっとこんな初々しい感じの作品を読みたくなりますね。
リアルで付き合ってるカップルとか見ると嫉妬の対象になるけれど、
こういう形で眺めるカップルは微笑ましいを通り越して
ひたすらに顔面の筋肉は弛緩し、誰か俺のこのニヤケ顔を止めてくれ！
でも見られるのは恥ずかしいから見ないでくれ！
テンションも何もかもヒートアップしてしまいましたが、
ごちそうさまです、実に甘露でございました。

悶絶もののエピソードを彩るは個性豊かな少年少女たち。
マイペース型のつかみどころのないタイプがいたかと思えば
終始ハイテンションの暴走タイプが出てきて、
その親友が人付き合いが苦手だから強がっている仮面クールタイプだったり。
実に様々なタイプがいたりして全員魅力的ではあるのですが、
中でも目立っていたのがハイテンション型の七種さん。
他が全体的におとなしめだったりマイペースだったりするものだから、
とにかく動き回るそのキャラは非常に印象に残ります。
しかも清純派じゃなくて、ちょっと変なところがあったりするのもポイント。

好きなものは右アッパーって・・・
付き合ってる沢井君もアッパー喰らったことがあったりするんでしょうか。
何かこのキャラだとタイガーアッパーカット的なものが飛び出しそうな予感ですけど。
普段そんな感じなのに下校中に手を繋いだら
思いっきり赤面して黙りこくってしまうとか最高じゃないか。
このようなギャップに目を見張るのであれば、
普段と二人きりのときとで違う顔を見せる睦美さんにも注目です。

一見するとごく普通の家庭的な娘だったりするのですが、
学校で見せるいつもの顔は全く異なるタイプだったりしてですね。
公私をしっかりと分けられるのって人間的にもいいなー。

人物たちのみならず、そのシチュエーションもまた胸を高鳴らせます。
直接言うのが恥ずかしいから糸電話を使って隣の部屋から愛を囁いてみたり、
何てことのない帰り道で手を繋いでみたり、二人並んで足湯に入ってみたり。
何だろう、全然やましいことのないただの足湯のはずなのに、
感じるこの妙なまでの色っぽさは。

でもいいよなー、こんな風に学校帰りに足湯に入るとか、
温泉地の地域に住んでいるからこその特権ですよ。
地域的なものの他にも既に付き合っている二人と
そうじゃない二人のダブルデートでもう一組も付き合うまでに至るエピソードも相当なもの。
人付き合い悪そうな感じの娘が内に秘めていた本音を洗いざらい口にする場面にはくるものがあります。

収録エピソードの中では珍しく付き合うまでの経緯が描かれているのですが、
付き合っているもう一組ってのが沢井＆七種ペアだったりしますから、
これは今後付き合い始めてからのエピソードが出てくることが期待できますね。
何と言っても今回はまだ『1巻』ですから、
これからも魅力的なキャラが織り成す赤面エピソードの数々に悶死できると思うと心躍ります。