空の下屋根の中 1巻

空の下屋根の中 (1) (まんがタイムKRコミックス)

空の下屋根の中 (1) (まんがタイムKRコミックス)

働かなくなったら負けだと思ってる。


高卒後、特にやりたいことを見出せずに無職となった香奈絵さん。
一日寝るだけの日を過ごしてみたり、漠然とネットをしてみる自堕落な日々。
就職する気はあったりなかったりする中、社会進出への活路を掴むことはできるのか・・・
一見するとニート作品ではあるのですが、
働く気がないと言うわけではなく、無職である自分へ対して抱いている危機感や、
面倒ではあっても少なからず就職活動をしてみたりする、
そんなリアルな現実ってものを横から眺めた問題作ですね。
無職生活、無職からの脱却を図った就職活動、そして労働。
就職難が叫ばれる今の世ならではの作品です。
実際、けっこう世の中にはこういう香奈絵さんみたいな人がたくさんいると思うんですよ。
特に不況で仕事がない昨今では特に・・・


とにかくただのニートものと違うところは香奈絵さん自身が、
無職である現状に対して危機感を抱いていること。
単純に働きたくないから働かないのではなく、
働くにあたって自分が一体何をやりたいかがわからないために、
スタートがちょっと遅くなってしまっている。
結果としては同じでも、意識的なものから考えると大きな違いですよこれは。
現状を何とかしたいと思いながらなかなか進展しない、
職安にも行ってみた、コネを辿ってもみた、
正社員は不安だからバイトで申し込んでみた。
地味にすごく大きな成長をしていると思います。
当初はただだらけた生活を描いただけかと予想していましたが、
何とか就職活動を行ってみて、結果働くようになって・・・
働き始めた頃の不安な気持ちとか、そんなものを思い出しますね。
時折キャラの視点が変わって各業種に見る
現状のようなものも見られるのも生々しいと言いましょうか。
IT企業に入社した元同級生が目の当たりにした現実とか泣けてきますよ。
開発業務に従事してピークを迎えるとプロジェクトによっては、
本当にこれが洒落にならない状態になりますし。


本編も十分すぎるほど問題作ではあるのですが、
真の問題作とも言えるのが描き下ろしとして収録されている一ニートの生活。
はっきり言って、死ねばいいのにと思わざるをえないその考え。
非常に悲しいことではあるものの、現実的にこういう考えの人がいるわけですよね。
時折考えることがあります、こういう輩を働かせようとするにはどうすればいいか。
一番手っ取り早いのは働かざるをえない状況を作り出すことと言うのはわかっているけれど、
ではどうやってその状況を作り出すのか。
まぁそれがわかれば世の中からニートなんてものが根絶されてますか。
自分なら引きこもってネットするなら電気代払え、
飯食うなら食費払え、でもなきゃ出てけってやり方を取るんでしょうけどね。
それがベストではありえないこともわかっているからこそ、
本気で働く気のない人間を働かせるのって難しいよなぁ・・・
とにかくこの一人のニートを見て確実に言えることは、
今やれることをやろうとしない人間は、いつまで経ってもやることなんてありません。
それで最期にやっておけばよかったと、
悔やんでも悔やみきれない後悔を残しつつ死んでいくのです。