それぞれの夏がやって来る 『げんしけん 二代目の弐』 11巻

げんしけん 二代目の弐(11) (アフタヌーンKC)

げんしけん 二代目の弐(11) (アフタヌーンKC)

夏コミを直前に控えた夏の日。
思い思いのイベント準備をこなして当日を迎えたが・・・
新世代に受け継がれた現視研メンバーたちにより再開した本作。
通算11巻目にして第2弾となる今回は、
オタであれば避けて通れぬビッグイベントを中心として、
現役生のみならずOBやその他関係者をも巻き込んだ
複雑な人間関係が怒涛の如く押し寄せる展開となっております。

普段じゃ明かされないような心情、
こんなときでもなければ出会うことのない相手との対面。
年二回のお祭りは、やはり色々と特別なものがありますね。
しかも年の瀬のこの時期に出してきたと言うのは、
リアルでも冬コミ直前の時期にジャストタイミングすぎて、
狙ってたようにすら思えてきます。
ここ数年は今回作中の斑目のように、
時期が到来してもいまいちテンションが上がらなかったり、
当日ですら実感ないまま気付けば三日間が終わってしまっていたことが多かったから、
こうして二次元で先行してイベントの空気に触れられるのは、
冷えたエンジンを過熱させるには十分すぎるほどの燃料となっています。
全盛期の2/3くらいに使用金額が減った今でも、
こうして熱い何かが滾って来るのは自分もオタだからなんでしょうね。


総受けヒロインは今回も絶好調!?
本作におけるヒロインと言えば斑目であることは紛れもない事実ですが、
今回も様々な人間関係の大きな輪の一つの中心として欠かせない存在となっています。
元々卒業前から密かに咲さんのことが好きではあっても、
既に高坂と付き合っているが故に自分の中だけに留めていたこの関係。
波戸ちゃんが登場してから混迷の一途を辿りつつありますね。
二代目になってからの話の主軸ってやっぱりこの二人だよなぁ。
ある意味絶対会ってはいけない波戸ちゃんと高坂がご対面してしまった時なんて、
そいつぁやべぇだろと見ていて気が気じゃなかったです。

二人とも何かがあったときに全てが瓦解してしまいそうな危うさがあって、
登場シーン自体が何か怖いものがありますよ。
波戸ちゃんの場合はアイデンティティーを見失って暴走しそうな危うさが、
斑目の場合はそもそもオタであることすら止めかねない危うさが。
前者は現視研メンバーに劣情を受け入れられて自分の居場所を見つけつつあるけど、
それでもまた何か重大なことが起こってしまったときにどうなるか。
これからもこの二人を巡る動向からは目が離せません。
尤も、斑目が豆腐マインドすぎるって話もありますけどね。
作中のキャラ達のみならず、本作の読者達からも、
総意で総受け認定されてしまうほどの萌えキャラだってのに、
その事実を知ってしまったときにショック受けすぎですって。

こういうリアクションをしてしまうことこそが萌えキャラたる所以なんですがね。
それを真に受けてリアルで『攻め』ようとする朽木は相変わらずKYですなぁ。

違うんだよ、BLってのは妄想ファンタジーであって、リアルは関与しちゃいけないんだよ。
しかし、社会人オタをやってる身として今回の斑目には色々思うところがありますね。
仕事をしているとどうしてもスケジュールの都合上、
三日間全て参加ってことが難しくなってきますし、
学生の頃にはっちゃけてたことも若気の至りと昔のこととなってしまう。
ぁー、何かこのイベントに対する枯れっぷりは、
まさにここ数年の自分自身を見てるようだわー。

歳を取れば取るほど保守的になってしまうのもどうかと思うんだけど、
気が付けばこんな風になってたりするから困る。


現視研を取り巻く人間関係は濃くも複雑。
元来オタサークルをテーマにした作品だから、
色々と濃い要素ってものは当然今回も多分に盛り込まれています。
部分的な台詞もさることながら、イベント期間なこともあって、
やはりコスプレしてるシーンが多いですね。
前日に皆で荻上宅で原稿やってるときも
荻上けいおん!あずにゃん、波戸ちゃんはCrossDaysのゆう。
当日のコスプレ広場ではみんな揃ってまどかコス。

特に最近は何気に重い話がメインになってたから、
こういうのを見ると何だか安心するなー。
そんな中で描かれるそれぞれの心情。
特に藪崎さんのツンデレっぷりがすごいですね。
陣中見舞いに来て原稿を手伝ってくれたり、
ほぼ荻上の相方状態でサークル参加してくれるし、
過去のトラウマを知る元クラスメイトが登場して
トラブル発生フラグを見事にブレイクしてくれたりもする。

しっかりと理解するところを理解してる名脇役すぎです。
藪崎さんの場合は最も顕著だけど、
矢島さんもなかなかに漢らしいところが所々に見え隠れしてますし、
全体的に信頼関係が厚くて、仲間っていいなーと思わされます。
何か本作においては太ましいこの二人が人間的に持てますね。