歴史に触れ、人と触れ合う 『かみさま日和』 2巻

かみさま日和 2 (芳文社コミックス)

かみさま日和 2 (芳文社コミックス)

なし崩し的にやる事となった巫女の仕事にも次第にやり甲斐を感じてきた史美華。

今日も神社の参拝客はわけあり事情の変わり者ばかりで・・・
ファンタジー的な要素も伝奇的な要素も全く無い、
現実の仕事としてリアルに描かれた巫女の奮闘記。
神事のみならず、神社における雑用全般を執り行い、
意外と肉体労働なところも多く、見た目以上にハードな仕事であることは、
前回の時点で余すところ無く描かれてきていました。
続く今回は仕事の内容よりも参拝客との交流や、
何気に千年以上の歴史を持つ神社に纏わる伝説、
特色溢れる全国の神社の現状に失われた行事再興に向けての奮闘など、
仕事としてよりも神社そのものの現状に迫る話が中心ですね。
ドタバタ劇もあれば友情や恋愛に悩んだり。
トラブル続きながらも毎回いい話で締めてくれることもあり、
日常系ヒューマンドラマとしてもすっきりした気分になれます。
ビル街の中にあっても別世界のような雰囲気漂うあの空間は、
やっぱり参拝するだけで特別な想いを抱けますね。
困ったときの神頼みと言うけれど、
別に困ってなくても定期参拝で足を運んでしまいたくなります。
主に神田明神とか。


神は全知全能にして万能であると思いたい。
だからこそ色々な人がお参りにやって来る。
多くは本殿の中を参拝したりご本尊を拝むためには
拝観料とか取られるところもありますが、
境内を参拝するだけなら基本無料なところも多いですし、
何よりも神様の御利益を信じたいときもある。
とにかく今回は十人十色な参拝客がいっぱいです。
開幕から大学受験の合格祈願にやって来た受験生三人組と見せかけて、
実は一人は浪人決定済み、もう一人は推薦合格済みな漫才トリオが登場して、
受験でテンション上がりすぎた暴走っぷりで笑わせてくれます。

他にもシノちゃんに告白しようと奮闘するクラスメイトや、
爬虫類大好きな矢部の友人に、女傑と言うにはごつすぎる婆さんなど、
非常に個性と言うには濃いメンバーばかりで、
コメディ描写に大いに貢献してくれています。
かと思えば、85年越しの想いを遂げるべくやって来た婦人のように、
しんみりできるエピソードもあり、
参拝者の個性共々話の展開も起伏に富んでいます。

そんな中で一番印象が強かったのが、
前回デスメタルグループとして出て来ていたデスブラザーズの面々が、
思わぬ形で再登場してきていたことですね。

実は結婚していて子供のお宮参りと言う、全く異なる形でやって来たり、
東京に進出して子供向け番組の名物キャラで人気になってたり。
何気に愛されてるキャラですなー。


巫女としても様になりつつあり、人との交流も深まりゆく。
変わり者ばかりだけど、皆願いは切実なものであり、
その願いに正面からぶつかる史美華さんの侠気がいいなぁ。
実はこういう場所に勤める人って人生相談スキルがあると重宝するのかも。
大学に入ってから何がしたいかではなく、
入ること自体が目的になってしまった程に追い詰められた受験生相手に、
受からなかったのなら、それはそれで意味があるなんて、
そんな逆転の発想を現役生相手に言ってしまうあたり器が大きすぎでしょう。
本気で上を目指すならともかく、そこそこの人生を望むのであれば、
学歴なんてそこまで大きな意味を持つほどの代物でもない。
でもさすがに怖くて言えんわそんなこと。
御守りに込められた意味を説教と共に語る場面も妙に格好いい。

確かに『物』として見るのならただのお札入りの袋です。
が、誰がどんな思いを込めて託したのか。
精神論になってしまうところだけど、形のない思いが力になることもある。
その思いを形として留めておくためのものだと考えると、
ただの小物だとないがしろにはできないなー。
しかし全国には色んな御守りってものがあるんですね。
神田明神でIT安全祈願の御守りを売ってるのは知ってたけど、
世の中にはペット用だの、料理上達祈願だの、
さすが日本の神様は八百万と言うだけあって、カバー範囲が半端ないです。

他の仕事仲間も色々と活躍はしてるんですよね。
みんなで矢部の誕生日を祝うところは文字通りの仲間であり家族である感じがたまりません。
兎にも角にもシノちゃんが可愛かった。
クールで厳しい真面目キャラだったかと思いきや、
神社マニア故にヒートアップしていたからだったと言うね。

その加熱っぷりもいいんだけど、まさか神社でも学校でもモテモテだったとは・・・