超王道にして超邪道ファンタジーの開幕 『天空の扉』 1巻

天空の扉 1 (ニチブンコミックス SH comics)

天空の扉 1 (ニチブンコミックス SH comics)

勇者が魔王を打ち滅ぼし、世界は平和になったかのように見えた。
その3年後、少年・ルーシュが出会った運命とは・・・

作者の時点からして王道なんてありえないと予想はしていましたが、
全くもってその通りの超王道にして超邪道ファンタジーが開幕です。
さすがにプリティベルの某厚志さんみたいな濃すぎるキャラはいないにせよ、
ドラクエのような世界観でありながら色んなものを否定した現実的な設定や世界観、
エロもグロも多分に含まれた強烈なまでのえげつなさ。
かと思えばやはりファンタジー世界ならではの伝説もあり。
実によく氏の色ってものが強く出ていますね。
表紙が主人公が全面に押し出されているもんだから、
今回は普通の王道な冒険が繰り広げられると思ったらとんでもない。
この手のファンタジーがLv1からスタートなんて誰が決めた!
と言わんばかりの開幕からぶっ飛んだスケールの戦闘が繰り広げられ、
話のスケールも壮大と、こいつぁすごいものが出てきましたわ。


敵は勇者!?助けた相手は魔王!?
そもそもの話の前提として、『勇者が魔王を倒した』と言う前提があるため、
いわゆる魔王の侵略から世界を救うだとか、そんな話ではありません。
大抵こういう設定がある世界観の話だと、
数十年とか数百年とか、長い年月をかけて魔王が復活しただの、
そういう時代考証が多い中でも3年後と言う後日談として妙に生々しい年月。
こうした前提の上でルーシュが出会ったのが力を失った魔王自身って始まりからして熱い。
当初は本当の目的を知って共に何かを求めて冒険してゆくような話だと思ってたんですよ。
そしたらいきなり目の前で街が滅ぶときたもんだ。
しかも攻撃を行った張本人が死んだと思われていた勇者その人で・・・

勇者と魔王の立場が逆転している状態とか、
一話目からこんなハードな世界観見せ付けられてしまって燃えないわけがありません。
勇者の死の真相もそうだけど、『正義』って何なんでしょうね。
かつての魔王だって世界を案じていた末の結果にしか過ぎないし、
死人に口なし、勝った者が正義と言う世の理は見ていて寒気がします。
こんな世界ですから、ハードな描写もかなり強烈。
具体的には、一話目でヒロインの一人がほぼ真っ二つに斬られます。
ええ、そりゃもう肩口から足までばっさりと。
治癒魔法で何とか生還するにしても、マジでえげつねぇ・・・
ぁ、でもエロ方面でも活躍している氏だけに、
エロい意味での際どいシーンもロリもきょぬーもひっくるめて色々出てきます。
おもむろに風呂場でローションプレイで迫ってくるレイシャさんエロいよ。

それとも別に、勇者サイドでも明らかに事後なシーンがあるんだけども、
これは限りなくアウトに近いセーフと思わせてやっぱりアウトなんじゃなかろうか。


最初から最終決戦も同然な戦闘レベルなもんだから、
本作通して主要キャラのチートっぷりが半端じゃないです。
強くてニューゲームでいきなりLv99だったりするようなもんです。
世界を救うだけの力があると言うことは、同様に滅ぼす力があることも同様ですから、
全てに容赦が無くなって悪堕ちした勇者が強いのは当然のこと、
主人公やヒロインに至るまでスペック高すぎです。
幼馴染のヒロイン・マギアは治癒魔法の精密さもさることながら、
魔王の魔法を全て継承してしまうほどのキャパシティを有していますし、
もう一人のヒロイン・レイシャも魔王の側近だから竜殺しなんてわけがない。
そしてルーシュの能力は一度は勇者を殺すほどの超威力。
確かにドラクエで言うルーラで使用される物理法則を、
そのまま攻撃に転用したらこんなことになってしまうのかもしれませんが・・・
マッハ50・秒速17kmって直撃しなくても衝撃波で軽く死ねるわ。

地道に戦闘経験重ねてレベルアップしてってことが非効率で非現実ってことはわかるけど、
開幕から全員強すぎて強さがインフレする余地すらないですって。


ドラクエに感じた矛盾点の一切を否定する!?
とにかく細部に至るまでRPGのお約束をブレイクしまくってたりするんですよね。
ルーシュの友人・スタンの装備からしてそう。
レプリカとは言え、勇者の初期装備がモンハンばりの重装備ときたもんだ。
ゲームだと布の服に棍棒を持たされるようなところだけど、
世界を救えって言ってる相手にどう考えたってそれはないですからねぇ・・・
他にも火炎魔法を風魔法で無効化してしまったり、
雷魔法で火薬に引火させて誘爆攻撃したりと、
ファンタジーの世界において物理法則ってものがしっかりと根付いてたりするんです。
ルーシュの攻撃にしてもそうですからね。
実際のドラクエでは洞窟とか屋内でルーラを使うと、
天井に頭をぶつけて失敗するなんて子ネタがあるけど、
あんな世界のどこでも一瞬でワープするほどの運動エネルギーで
何かとぶつかってしまったら最悪粉々、良くても原型留めないですって。

このあたりはあとがきで存分に語られているところですが、
子供の頃からこんなことを全力でツッコみながらプレイしてたとすると可愛くねぇ・・・
一応ドラゴンが空を飛ぶのはパッシブで強化魔法がかかっているからって設定もありますけどね。
このあたりのファンタジー世界にありながら、
ファンタジー設定を真っ向から否定する展開こそが邪道たる所以かなと。


その存在はマスコット?いいえ害獣です。
ある意味主人公たちよりも目立っていて、
影の主役なんじゃなかろうかって存在、それがゴブリン達。
本作の世界においては最弱モンスターに位置付けられているのですが、
このモンスターなくして本作は語れないってくらいの存在感なんですねこれが。
主に命の軽さとグロさ的な意味で・・・

ぃゃ、普通に見た目だけなら間違いなくマスコットキャラになれる可愛さなんですよ。
語尾も『ゴブ』じゃなくて『コプ』ってところもそうだし、
本作じゃなかったらペットに欲しいと思ってしまうくらいにはラブリー。
が、食欲と繁殖力だけは半端じゃないので、とにかくどこにだって出てきます。
出てきて食事をせがんだり何かに巻き込まれたりしながら駆逐されるのが通例。
言うなれば、見た目は可愛いけど扱いは『G』のような存在ってところでしょうか。
とにかくジェノサイドされっぷりがまたエグいんですねこれが。
全身串刺しになったり、踏み潰されたり頭を吹っ飛ばされたり、
専用トラップで共食いしたり、凍らされたり暖炉にくべて焼かれたり。

ありとあらゆる手段で虐殺されまくり。
特に串刺しと脳天吹っ飛びは本気でエグいと言うかグロい。
主人公もヒロインも容赦なく殺してるシーン満載って何かすごい世界です。
まぁ見た目に騙されないように、害獣は害獣として駆除すべきってことですね。
巻末で生態が紹介されてたり、ゴブリン側から見た話とかもあるので、
そういう意味では優遇されているとも言えなくはないのかな。
結局は虐殺されるわけだけど・・・