あなたの知らないコミック書店の世界 『デンキ街の本屋さん』 1巻

デンキ街の本屋さん 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

デンキ街の本屋さん 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

とある電気街に居を構えるコミック専門店『うまのほね』。
そこでは週末新刊のシュリンク作業に追われる店員たちの姿があった・・・

同じ本屋を題材とした作品の中でも、
秋葉原を中心とした専門店を舞台とした本作は極めて貴重。
取り扱う品物が違えば業務形態も変わってくる。
リアルな仕事の話にしても、今まで見てきた本屋ものとは一線を画してます。
どちらかと言うとこの手の書店の方を利用する比率が圧倒的に高い身としては、
何かと身近な話ではあるにせよ、買い漁る裏ではこんな苦労があるんだなーと。
確かにどこの店に行ってもPOPとかテンション高くてノリのいい店員っていますし、
そういう意味でも描写が相当にリアルです。
目玉商品が出たときの『積み』とか、大量に単行本が発売される時期、
極めつけのコミケ新刊が一気に押し寄せてくる鉄火場。

身近すぎて店員さん本当にお疲れ様ですと心から言いたい。
重労働に追われながらも全力で打ち込み仕事を楽しむ店員たち。
やっぱ仕事とはかくあるべきですよ。
専門書店ならではのメタ的な話以外にも多分にパロ要素も含まれていたり、
際どいラインのギリギリ発言も飛び出したりと、
純粋にコメディものとしても楽しめる一作。
最早本作を読まずして秋葉原は語れない!?かも?


共通の好みを持つからこそわかる魂と苦労。
本作の舞台モチーフはとらのあなで間違いないと思われますが、
そもそものネーミングからして『うまのほね』って・・・
店名からしていきなり吹きましたわ。
ライバル店もメロンブックスならぬ『みかんブックス』だし。
当然店員はもっと特徴的でみんな変わったあだ名を持っていて、
その名が付くに至った挙動を見るとどれも納得の変人なんですね。
ひおたんをいじってリアクションの撮影を楽しみとする『カントク』とか、
書店員の傍ら同人作家もやってるけど豆腐マインドの『先生』とか、
最年少16歳高校生にしてゾンビ作品マニアの『腐ガール』とか。
作中に出てくる店員にまともな人間はいないのか!?
でも、これだけ濃いからこそ、親近感を覚えるというもの。
供給する商品が商品ですから、やっぱりそういうのが好きじゃないと勤まらないですよね。

趣味と実益を兼ねているからこそ成立する特設コーナーやPOPの数々。
普段あまりじっくり見ることもないですが、
店員の『魂』が込められていると思うと、やっぱり見ないとなー。
今度行ったときはもうちょっと視野を広げて色々と見てみよう。
特に漫画読みの身としては一期一会ってところは非常に染み入りましたね。

見たときに気になったものを買ってこそなんですよ。
時期を逃すと急に読む気がなくなってしまったり、入手が困難になってしまったり。
作中では単行本に関して語られているけれど、同人誌にもなると更に顕著ですからね。
いつか『ソムリエ』みたいに相手の好みに応じた作品を紹介できるようになりたいです。


非常に個性の濃い店員たちの織り成す濃いネタのオンパレード。
開幕からして週末に大量発売される単行本のシュリンク作業を
徹夜総がかりでこなすとかとんでもない始まりだったりして、
リアルすぎて笑うに笑えないっすよこれは・・・
さすがに極端な例なんだろうけど、特に雑誌とかだったりすると、
本当にデカい目玉が出たりすると梱包が間に合わなくて
一時販売中止なんてことも起こったりしますし。
コミケ時期なんてそれこそ万単位に及ぶであろう同人誌を袋に入れて・・・

文字通り血反吐を吐く思いで仕事している店員さん本当にありがとう。
眠々打破とレッドブルを同時に飲む『ダッハブル』は、
効きそうだけど寿命を削る諸刃の剣にしか見えないので無理しない程度にお願いします。

いずれ必要に迫られたときは一回試してみるか。
しかし対象年齢が適切に振り分けられてるかお役所の役人がチェックするとか、
随分と世知辛い世の中になってしまったもんだわい。
やっぱ地味なところで例の条例の影響って出てるんだなと。

メタもあればパロもある。
他の水あさと氏の作品を知っていると表紙からしてニヤリとさせてくれます。
ひおたんが持ってるのは『世界制服セキララ女学館』で、
うみおはうみおで『めいなのフクロウ』を持ってるじゃないですか。
同人誌の『ファミレスの住人』とか『帰れない二人』もあったりするし、
細かいところでのネタ濃度が半端ないです。
仕事をやり遂げた時だとどこぞのサイキョー流とかどこぞのみすずちん。
どこぞの海原雄山よろしく『このPOPを〜』とか怒鳴り込んできたりもする。
マニアックなところでは70年代ゾンビ映画ネタとかもあるし、当然他にも諸々。
うん、やっぱり街が街ですから、このようなネタはかくあるべきですね。


色んな意味で際どい発言がいっぱい飛び出すのもまたドッキリ。
普通にいい言葉も出てくるには出てくるのですが、
ギリギリライン、むしろちょっぴりアウトな爆弾発言に目が行ってしまいます。
大半はテンパったひおたんの口からだったりするんですけどね。
エロが嫌いな紳士なんていません!と言わんばかりの『エロ本大好き人間』発言に始まり、
比喩でも何でもない本当に直球で股間の意味で『もっこり』言っちゃったり。

このあたりはさすがめいなのフクロウにおいて、
『性的に好きなの!』と言う名言(迷言?)を生み出した水あさと氏の色が出てるなー。
ぃゃー何をするにも百面相、追い詰められて爆弾発言のひおたん可愛いです。
こんな娘さんと一緒ならどんなに辛くても頑張れそうな気がします。